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Wikipediaの「ヘリコプター」の項について [ヘリコプター]

ブログのタイトルが「ヘリコプターを飛ばす」となっているのに、最近全くヘリについて書いていません。さすがにこれではまずいと思うので、たまにはヘリについて書いてみます。

私はWikipediaは大好きでよく見ていますが、「ヘリコプター」の項がだいぶ改訂されていたので解説や突っ込みを入れてみます。
(なお、この記事は2008.2/14現在の記事についての評価です)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%AA

http://en.wikipedia.org/wiki/Helicopter (あいかわらずですが英語版の方が優れています)

記事の引用と解説という体裁にします。

ヘリコプターはローターのひねり角度(ピッチ角)や回転面の傾きを調整することによって、非常に複雑な動きができる。例えば、垂直上昇や垂直降下、空中停止(ホバリング)のほか、機体の向きを保ちながら真横や後ろに進む事もできる。また一般的には不可能だが、宙返りができる特別な機体もある。(OH-1など) このようなヘリコプターの特徴は、狭い場所や複雑な地形での活動に向いており、軍用以外にも山岳地や海上などにおける物資の輸送や、遭難者の救助、報道取材、農薬散布などの産業航空用に適している。ラジコン玩具も、固定翼機に比べて操縦が容易で少ない空間で飛ばせる事からホビーとして人気が高い。また自動制御のロボットヘリも観測や農薬散布用などに実用化されている。
ローターのひねり角というのはなかなか微妙な表現ですが、正確です。宙返りは通常のヘリでは無理です。
ただし、ラジコンでは出来るものが多いです。(プロポと機体が別売りのマジメな機体ならまずできます)

なぜループが出来ないのかは、この本をみると少しはわかるかも。
ダイナミックス オブ ヘリコプターフライト

ラジコン玩具で飛行機よりヘリの方が操縦が簡単というのはきわめて疑問です。普通のラジコンヘリのホバリングは相当難しい部類に入ると思います。飛行機の方がただ飛ばすだけなら簡単な気がします。



テールローターの形式も色々書いてありますが、通常のシングルテールローターからなぜかタンデムや二重反転ローターに続きます。微妙な配置です。そもそもタンデムはテールローターとは関係ないです。
項目名をテールローターでなく、「アンチトルク」とすべきですね。


ドラッギング
回転方向に個々のブレードが運動するのをドラッギング、またはリード・ラグ運動と呼び、その角度をドラッグ角と言う。エンジン始動時の起動トルクがメイン・ローターにかかるときには最大で25度ほども、ブレードが遅れて角度が付く。通常飛行時には遅れ方向で10~15度程度、地上でエンジン停止時には進み方向で3度ほど、オートローテーション時には±0となる。

これも微妙な表現です。始動時や停止時の動きは過渡状態ですので無視します。通常飛行時には遅れるのは当然です。しかしオートローテーション時には僅かに進みます。ゼロにはなりません。


フェザリング
フェザリングはブレードの迎え角の変化である。フラッピングとフェザリングは関係が深い。フラッピングによってブレードが上に上がると(フラップ・アップ)、フェザリング角が小さくなるようにブレードが曲がるようになっている。このため、前進飛行中に左右のブレードに当る空気の速度が異なっても、揚力が大きくなる前進側のブレードはフェザリング角が小さくなり、揚力が小さくなる後進側のブレードはフェザリング角が大きくなり、自動的に左右の揚力が調整されるように出来ている。

この項は間違っています。まず、フラッピングとフェザリングの連成はデルタスリー角の設定によります。ゼロの場合、フラッピングとフェザリングは関係なくなります。
通常はデルタスリー角は付けられるので関係してきますが、前進飛行時の揚力の不均衡を補償するのは、フェザリング角ではなく、主には「フラッピングによるブレード自身の動きによる迎え角の変化」です。
迎角は「相対風と翼弦のなす角」と定義されていますから、自分が上に上がりつつ揚力を発生したら相対風が上から吹き込んだのと同じで揚力は現象します。(前進側で起こっている)

自分で書いていてわかりにくい説明だと思いますが、興味がある方は専門書を見てみてください。


オートローテーション (Autorotation)
オートローテーションとは、降下する事により空気からエネルギーをもらい推力を発生させる飛行であり、エンジンからの動力の供給はなく、メインロータは空気力によって回され、これによってテールロータ、補機なども駆動されている状態をいう。ヘリコプタはこのオートローテーションにより、全てのエンジンが停止しても安全に着陸する事が可能である。また、オートローテーションはヘリコプタ操縦に必須の技術であり、ヘリコプタパイロットは必ずその訓練を受けている。ヘリコプタ技能試験においても試験要領に含まれており、ある一定の高度から、地上の規定の広さの中へ安全に模擬着陸ができることが要求されている項目である。

これも降下することにより空気からエネルギーをもらうという表現が妙に文学的ですが、間違ってはいません。

補機を駆動するということですが、昔の機体はハイドロポンプがエンジン側についているのもあったらしい。
こちらに記載があります。
http://www.munage.com/main.htm

ちなみに、R22は補機といえるものはほとんど付いていませんが、オルタネーターはエンジン側についています。

全てのヘリパイロットはオートロの訓練を受けていると書いてありますが、当然です。自分の命をかけて乗っているのです。自家用では最後のほうはオートロの訓練ばかりになるはずです。



まあこんな感じですね。ヘリの空力は非常に複雑でわかりにくいです。しかし、それだからこそ面白いです。
しかし、Wikipediaのこのヘリコプターの項は以前に比べて非常に詳しく、かつ正確になっています。どんどん改訂されて良い記事になればよいと思います。
そうしてもっと一般の人にヘリに親しみを持ってもらえばよいと思いますね。


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MAC

こんにちわ 初めましてMACと申します。
私はRCスケールヘリが好きで、電動400に自作ペーパーボディをつけて飛ばしています。
そしていつも、実機と比較し少しでも近づけたいと思っています。

そんな折、take3さんのHPを拝見し大変勉強になりました。(勝手ながらブログに紹介記事を書かせていただきました。ご迷惑でしたら一報をおねがいします。)

私の夢は、小型RCヘリでブレードスラップを響かせながら飛ばすことですが、現実的には難しく悪戦苦闘中です。良いアイデアがあれば教えてください。

あと、よろしければ動画も見てやってください。
http://71667469.at.webry.info/200906/article_15.html

突然の訪問に勝手なお願い、失礼しました。
できましたら、今後ともよろしくお願いします。
by MAC (2009-07-14 13:35) 

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