スズキ・ソリオ 試乗(フルハイブリッド) [クルマ関係]
最近は記事がクルマの試乗ばかりになってきていますが、今回も試乗です。今回はスズキのソリオのフルハイブリッド版に乗ってきました。
結論から言うと、なかなか良かったです。売れるだろうと思いますし、いろいろな意味でスズキらしい合理性がにじみ出ていると感じました。
試乗したのはこちらです。ザ・ファミリーカーという感じ? (ソリオ ハイブリッド)
まず最初に用語の整理をしておきます。
AGS:Auto Gear Shift スズキのAT(正確にはAutomated MT)
MGU:Motor Generator Unit 駆動および回生ユニット
ISG:Integrated Startart Generator スターターおよび発電機(組み込み型)
パワートレーンの性格は、もちろんエンジンの特性が大きいですがトランスミッションにも強く影響されます。スズキではアルトやエブリイ、キャリーなどにAGSが採用されており、これはシングルクラッチのATです。つまり、自動化されたMTです。
( このあたりは以前にとりあげています。http://jl4ouf.blog.so-net.ne.jp/2015-01-25 )
今回のフルハイブリッド版ではトランスミッション本体はAGSですが、パラレル方式のハイブリッドになっています。具体的にはトランスミッションの下流にモータートルク(プラストルクまたはマイナストルク)を添加する方式になっています。
以前からスズキはSエネチャージというハイブリッド(正確にはマイルドハイブリッド)方式を採用していましたが、これとの差はEV走行ができるかどうかです。つまり、クラッチより下流にモーターがあるかどうかということになります。
つまり、”AGSのクラッチが切れている状態でモーターがトルクを出せるかどうか” というところが違います。これには二つの意味があります。
1.EV走行が可能
EV走行ができるということは、低車速あるいは停止時からのモーター発進が可能ということです。おかげで、スムーズな発進が容易になります。また逆方向からみると、純回生ブレーキも可能となることを意味し、回生量を増やすうえで非常に重要なことです。
2.変速中のトルク変動をカバーできる
AGSはシングルクラッチなので、変速中にはどうしてもトルク切れがありますが、それをモーターでカバーすれば、スムーズな変速が可能です。とくに高トルク領域でのシフトアップでは、どうしてもトルク変動が大きくなります。モーターならプラスもマイナスもトルク管理は自由自在でしょうから、変速品質が改善できるでしょう。
なお、スズキのフルハイブリッドは、「汎用性」と「低コスト」を非常に強く意識した感じです。特に感じることはフルハイブリッドにもかかわらず、DC-DCコンバーターがないことです。
SエネチャージではISGは回生の要なので必須ですが、フルハイブリッド版ではISGでの回生はしていないようです。そうなると必須ではないだろうと思われますが、エンジンの停止と再始動が多いため、始動のスムーズさとマイルドハイブリッドとの部品の共通化を目指してISGを残しているのだろうと思います。
またDC-DCコンバーターがないため、電池の電圧が低い(100Vだそうです)こともありMGU(駆動用モーターのことです)のパワーには上限があるようですが、コスト上昇を避けられるようです。また、MGUと駆動用バッテリーは、駆動および回生のみに使用されるようです。これも、強電系をシンプルにして、さらにシステム同士の関連を減らして汎用性を高め、コストを下げるための配慮を強く感じます。
それではいつも通りのインプレですが、例によってパワートレーンの感想が多いのでご了承ください。
まず、EV走行ですがとくに感想はありません。静かに発進しますが、最近はモーター発進は珍しくないので、こんなものだろうと思います。宇宙船のような低速時の警告音にも慣れました。
極低速域でも特に変わったことはありません。あまり粘らずエンジンがすぐかかりますが、始動時も比較的スムーズです。プリウスのように、いつエンジンがかかっているのか全然わからないということはないですが、別に気になりませんでした。
そして、問題のアクセルを踏みっぱなしでの全開加速です。ハイブリッドではないAGSでは、つんのめるようなトルク変動がありましたが、シングルクラッチにもかかわらずフルハイブリッド版ではかなりなめらかに加速していきます。まったくシフトショックがないというわけではありませんが、AGS単品とは雲泥の差です。
これはかなり良いです。AGSも正しい乗り方をすればなめらかに動きますが、そのような配慮がいらなくなりました。万人向けになったと思います。
パワートレーンのダイレクト感については、それなりです。AGSですのでクラッチ締結中はMTと同じはずですが、そこまでのダイレクト感はありません。またアクセル操作に対してのトルクデリバリーがわざと鈍く作ってある印象です。
ただし、THS(プリウス等)の速度指示装置のようなアクセルよりはだいぶ良いようには思いました。MTと同じダイレクト感を、意図的に薄めている感触を感じました。
ちなみに、駆動系にダンパーがほとんどないGT-Rとの比較では、やはり雲泥の差です。GT-Rはとてつもなくダイレクトであり、そしてパワートレーンがうるさいです。
回生に関しては、特に感想はありません。とくに違和感はありませんでした。さすがにこのあたりはSーエネチャージでの経験がありそうです。
なお、ハンドリングについては試していませんが、やや曖昧な感じはありました。コーナーを攻めるような車ではないので問題ないと思いますが、ゴルフやGT-Rのようなカチっとした感じはありません。モーターボートみたいな感じはあるものの、街中では気を使わないセッティングだろうと思います。これはこれでよいだろうと感じました。
なお、今回の試乗で初めてソリオに乗りましたが、視界が良いことが印象的でした。GT-Rは後ろが全然見えず、ケイマンもあまり視界が良いクルマではありませんでした。アイの視界もまあまあですが、ソリオは周りが良く見えます。これも街乗りでは大事な点だろうと思います。
センターメーターです。そして、右側に「なんちゃってタコメーター」があります。バイクなどではタコメーターは計器盤の一等地に鎮座していますが、ソリオでは隅に追いやられています。いかにも現代の車ですね。
今回のフルハイブリッドはAGSの弱点を巧妙にカバーしています。MTの持つ伝達効率の良さはまったくスポイルされていないはずなので、CVTに比べて高速巡航での燃費は良いはずです。
ただし、マイルドハイブリッド(マイルドと表記)に比べて20万円ほど高いため、フルハイブリッド(フル)を買うべきかどうかというと微妙なところかもしれません。
極低速域では、EV走行ができるためフルが良いでしょう。
車速が遅い領域での差はあまりないか?コスト的にはマイルドか?
高速巡航 伝達効率の良さでフルが良い?
結局のところ、ソリオで想定されるような低速域では、意外とマイルドハイブリッド版のほうがコストパフォーマンスが良いのかもしれません。まあ、フルハイブリッドもかなり売れると思うので、リアルワールドでの燃費をみてから選択してもよいかもしれません。
フル版もAGSという特殊な少数派のトランスミッションから想定されるようなフィーリングではありません。CVTと似たようなセッティングにしてある印象なので、マイルドかフルは好みの領域かもしれません。
今後このAGS+モーター式のパラレルハイブリッドが生き残れるかどうかは市場が決めることです。しかし、個人的な意見を言うならば、このシステムには未来があるとおもいます。
トヨタのTHS(プリウス、アクア他。ほぼすべてのトヨタハイブリッド)ほどの柔軟性はないものの、このシステムは適度に汎用性を持ち、モーター出力、バッテリー出力などの設定がしやすいはずです。
ノートの e-POWERといい、THSといい、AGS+ハイブリッド、ホンダのDCT+モーターといい、各社から様々なパーワトレーンが発売され、実に面白い時代です。エンジンの型式が収束しつつある中で、テクノロジー的に楽しい時代を生きていると実感します。
結論から言うと、なかなか良かったです。売れるだろうと思いますし、いろいろな意味でスズキらしい合理性がにじみ出ていると感じました。
試乗したのはこちらです。ザ・ファミリーカーという感じ? (ソリオ ハイブリッド)
まず最初に用語の整理をしておきます。
AGS:Auto Gear Shift スズキのAT(正確にはAutomated MT)
MGU:Motor Generator Unit 駆動および回生ユニット
ISG:Integrated Startart Generator スターターおよび発電機(組み込み型)
パワートレーンの性格は、もちろんエンジンの特性が大きいですがトランスミッションにも強く影響されます。スズキではアルトやエブリイ、キャリーなどにAGSが採用されており、これはシングルクラッチのATです。つまり、自動化されたMTです。
( このあたりは以前にとりあげています。http://jl4ouf.blog.so-net.ne.jp/2015-01-25 )
今回のフルハイブリッド版ではトランスミッション本体はAGSですが、パラレル方式のハイブリッドになっています。具体的にはトランスミッションの下流にモータートルク(プラストルクまたはマイナストルク)を添加する方式になっています。
以前からスズキはSエネチャージというハイブリッド(正確にはマイルドハイブリッド)方式を採用していましたが、これとの差はEV走行ができるかどうかです。つまり、クラッチより下流にモーターがあるかどうかということになります。
つまり、”AGSのクラッチが切れている状態でモーターがトルクを出せるかどうか” というところが違います。これには二つの意味があります。
1.EV走行が可能
EV走行ができるということは、低車速あるいは停止時からのモーター発進が可能ということです。おかげで、スムーズな発進が容易になります。また逆方向からみると、純回生ブレーキも可能となることを意味し、回生量を増やすうえで非常に重要なことです。
2.変速中のトルク変動をカバーできる
AGSはシングルクラッチなので、変速中にはどうしてもトルク切れがありますが、それをモーターでカバーすれば、スムーズな変速が可能です。とくに高トルク領域でのシフトアップでは、どうしてもトルク変動が大きくなります。モーターならプラスもマイナスもトルク管理は自由自在でしょうから、変速品質が改善できるでしょう。
なお、スズキのフルハイブリッドは、「汎用性」と「低コスト」を非常に強く意識した感じです。特に感じることはフルハイブリッドにもかかわらず、DC-DCコンバーターがないことです。
SエネチャージではISGは回生の要なので必須ですが、フルハイブリッド版ではISGでの回生はしていないようです。そうなると必須ではないだろうと思われますが、エンジンの停止と再始動が多いため、始動のスムーズさとマイルドハイブリッドとの部品の共通化を目指してISGを残しているのだろうと思います。
またDC-DCコンバーターがないため、電池の電圧が低い(100Vだそうです)こともありMGU(駆動用モーターのことです)のパワーには上限があるようですが、コスト上昇を避けられるようです。また、MGUと駆動用バッテリーは、駆動および回生のみに使用されるようです。これも、強電系をシンプルにして、さらにシステム同士の関連を減らして汎用性を高め、コストを下げるための配慮を強く感じます。
それではいつも通りのインプレですが、例によってパワートレーンの感想が多いのでご了承ください。
まず、EV走行ですがとくに感想はありません。静かに発進しますが、最近はモーター発進は珍しくないので、こんなものだろうと思います。宇宙船のような低速時の警告音にも慣れました。
極低速域でも特に変わったことはありません。あまり粘らずエンジンがすぐかかりますが、始動時も比較的スムーズです。プリウスのように、いつエンジンがかかっているのか全然わからないということはないですが、別に気になりませんでした。
そして、問題のアクセルを踏みっぱなしでの全開加速です。ハイブリッドではないAGSでは、つんのめるようなトルク変動がありましたが、シングルクラッチにもかかわらずフルハイブリッド版ではかなりなめらかに加速していきます。まったくシフトショックがないというわけではありませんが、AGS単品とは雲泥の差です。
これはかなり良いです。AGSも正しい乗り方をすればなめらかに動きますが、そのような配慮がいらなくなりました。万人向けになったと思います。
パワートレーンのダイレクト感については、それなりです。AGSですのでクラッチ締結中はMTと同じはずですが、そこまでのダイレクト感はありません。またアクセル操作に対してのトルクデリバリーがわざと鈍く作ってある印象です。
ただし、THS(プリウス等)の速度指示装置のようなアクセルよりはだいぶ良いようには思いました。MTと同じダイレクト感を、意図的に薄めている感触を感じました。
ちなみに、駆動系にダンパーがほとんどないGT-Rとの比較では、やはり雲泥の差です。GT-Rはとてつもなくダイレクトであり、そしてパワートレーンがうるさいです。
回生に関しては、特に感想はありません。とくに違和感はありませんでした。さすがにこのあたりはSーエネチャージでの経験がありそうです。
なお、ハンドリングについては試していませんが、やや曖昧な感じはありました。コーナーを攻めるような車ではないので問題ないと思いますが、ゴルフやGT-Rのようなカチっとした感じはありません。モーターボートみたいな感じはあるものの、街中では気を使わないセッティングだろうと思います。これはこれでよいだろうと感じました。
なお、今回の試乗で初めてソリオに乗りましたが、視界が良いことが印象的でした。GT-Rは後ろが全然見えず、ケイマンもあまり視界が良いクルマではありませんでした。アイの視界もまあまあですが、ソリオは周りが良く見えます。これも街乗りでは大事な点だろうと思います。
センターメーターです。そして、右側に「なんちゃってタコメーター」があります。バイクなどではタコメーターは計器盤の一等地に鎮座していますが、ソリオでは隅に追いやられています。いかにも現代の車ですね。
今回のフルハイブリッドはAGSの弱点を巧妙にカバーしています。MTの持つ伝達効率の良さはまったくスポイルされていないはずなので、CVTに比べて高速巡航での燃費は良いはずです。
ただし、マイルドハイブリッド(マイルドと表記)に比べて20万円ほど高いため、フルハイブリッド(フル)を買うべきかどうかというと微妙なところかもしれません。
極低速域では、EV走行ができるためフルが良いでしょう。
車速が遅い領域での差はあまりないか?コスト的にはマイルドか?
高速巡航 伝達効率の良さでフルが良い?
結局のところ、ソリオで想定されるような低速域では、意外とマイルドハイブリッド版のほうがコストパフォーマンスが良いのかもしれません。まあ、フルハイブリッドもかなり売れると思うので、リアルワールドでの燃費をみてから選択してもよいかもしれません。
フル版もAGSという特殊な少数派のトランスミッションから想定されるようなフィーリングではありません。CVTと似たようなセッティングにしてある印象なので、マイルドかフルは好みの領域かもしれません。
今後このAGS+モーター式のパラレルハイブリッドが生き残れるかどうかは市場が決めることです。しかし、個人的な意見を言うならば、このシステムには未来があるとおもいます。
トヨタのTHS(プリウス、アクア他。ほぼすべてのトヨタハイブリッド)ほどの柔軟性はないものの、このシステムは適度に汎用性を持ち、モーター出力、バッテリー出力などの設定がしやすいはずです。
ノートの e-POWERといい、THSといい、AGS+ハイブリッド、ホンダのDCT+モーターといい、各社から様々なパーワトレーンが発売され、実に面白い時代です。エンジンの型式が収束しつつある中で、テクノロジー的に楽しい時代を生きていると実感します。
2016-12-04 14:47
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