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ロビンソンR44解説 「チェックリスト」 [ヘリコプター]

以前ロビンソンR22のチェックリストについて書きましたが、今回はR44のそれを解説してみます。プリフライトのものは省略し、「Before Engine Starting」、「Engine Starting & Runup」にしぼります。
まあ、R22とR44はほとんど同じです。とくにR44もAstroとRaven1はキャブであることから、本当に似ています。

なお、これは2021/4にRHCからダウンロードした、R44 Raven2のマニュアル(POH)からの抜粋です。

こんな感じでずらっと項目が列挙してあります。
cheklistR44_1.png

[Before Starting Engine]

Seat Belt : Fastened
シートベルトを締めます。最近の機体は、バックルが車のスタイルのものが多いでしょうか。なんの変哲もない3点式シートベルトであり、車と同じように急に引っ張るとロックされますので、高度計の規正をするときなどに前かがみになろうとした時に拘束されてイラっとすることもあります。


Fuel Shut-off valve : On
燃料バルブを開けます。R22では左席の後ろですが、R44はセンターコンソール?にあります。見やすいです。ノブが横向きになっており、ONという字が見えればOKでしょう。
R22において、飛行中に左席のシートベルトを再装着したときにバルブに引っかかり燃料がカットされ、オートロを余儀なくされたという事故があるらしいです。R44ではそのようなことは起こりにくそうです。
ロビンソンは全体的に燃料系統は非常にシンプルです。燃料切り替えバルブもありません。


Cyclic/Collective friction : Off
Cyclic, Collective, pedals : Full Travel free
Throttle : Full Travel Free
Collective : Full down, friction on
Cyclic neutral : Friction on
Pedals : Neutral
フリクションをOFFにして、すべてのコントロールを動かし引っかかるところがないことを確認します。自分はサイクリックは右回りに回していますが、ようするに全部動かせれば良いということでしょう。ペダルは両方を片足で踏んでおけばニュートラルです。
ちなみにキャブ機ではスロットルを開けると加速ポンプ?の働きで燃料がキャブから垂れるらしい。そのため、即席プライミングになるのですが、何回もやるとよくないらしいです。
まあ、どちらかというとクローズ側のディテントスプリングのチェックという意味かもしれません。


RotorBrake:Disengaged
天井にあるブレーキの取っ手を解除です。構造はまるでママチャリブレーキです。
ちなみにブレーキがかかったままだとスターターが回りません。気づかなければ焦るかも。(ブレーキは作動時に警告灯がつくので、冷静に考えれば気づくはずです。)


Circuit breakers : In
ブレーカーがすべてIn(押し込んだ状態)になっているのを確認するということです。左席の膝裏にあります。R22と同じでクラッチアクチュエーターのそれには帽子?がついています。


Landing Light:Off
なぜかスイッチがサイクリックについている着陸灯を消します。かなり唐突な位置にあるように思います。


Avionics Switch:OFF
アビオニクスを全部切ります。というか普通はアビオニクスを切ってからマスタースイッチを切るはずなので、切れていることを確認という感じでしょう。
アビオニクス自体のOFFあるいは、アビオニクス・バスのスイッチを切るということです。


Clutch : Disengaged
クラッチスイッチは、ミサイルみたいなカバーの付いた一番かっこいいスイッチであす。クラッチスイッチがオフであることを確認ということです。


Altimeter : Set
ATISあるいはタワーに聞くか、空港の標高をセットします。


HYD and Governor switches:OFF
コレクティブにあるガバナースイッチと、サイクリックにあるハイドロスイッチをいずれもONにします。これは、どちらもトレーニング以外では常時ONと決まっているスイッチです。



続きです。
cjeliost R44_2.png


[Starting engine and run-up]

Throttle : Closed
スロットルが全閉であることを確認します。具体的には、左手グリップを親指側に回すことになります。バイク乗りはご注意ください。逆にやりがちです。


Battery, Strobe switches: On
右端にあるマスタースイッチを入れます。大体は、マスタースイッチを入れるとモーター駆動のジャイロ計器のスピンアップの音がし始めます。キュイーンといいます。
またCOディテクターの警告灯が、テストで2回点灯します。
そして、コレクティブが最低位置にない場合は、LowRPMの警告音が鳴り響きます。LowRPMはハモッたような非常に耳障りな、つんざくような音でビックリします。
ストロボは、テールコーンについている警告灯が光ります。テールローターは危険なので、その警告の意味があるようです。
あとはチェックリストにありませんが、ELTのArmedポジションも確認した方が良いようです。


Area : Clear
まわりに誰もいないことを確認します。クリアーと大声で叫びます。エンジン始動のハンドシグナルは、腕を曲げてぐるぐる回すということになっています。
うるさくて聞こえない場合はそのようにすればよいでしょう。ちなみにエンジンカットは手刀で自分の首を切るジェスチャーです。
(これは、ICAOの正式な決まりですので世界中で通用するはずです。直感的にもわかりやすいようになっているため、知らない素人にも通用するかも。)


Ignition switch : Prime, then both
まずプライミングです。電気駆動の補助燃料ポンプで燃料を送ります。5秒程度とマニュアルに記載があります。ギュイーンと音がします。
Bothというのは両方のマグネトで点火するということです。二重点火システムという意味です。手を離せばBOTHに戻ります。


Mixture: pull off
まずはミクスチャーを引きます。リーンのカットオフ位置という意味です。


Starter : engage
Mixture: move full rich
コレクティブまたはサイクリックにあるスターターボタン(スイッチ)を押します。スターターが起動してエンジンを回します。初爆があればミクスチャーをリッチに押し込みます。
なお、Raven1などのキャブに比べてRaven2の燃料噴射のほうがエンジンがかかりやすいのかどうかは微妙なように思います。理論的にはFIのほうが良いはずでしょうが、必ずしもそうでもないような気がします。
なお、FIでなぜこのような手順になっているのかは調べてもわかりませんでした。なにか理由はあるのだと思いますが、詳細は不明です。
なお、自分の持っているエクシーガやR35は、当然FIですがボタンでの始動です。ボタンといってもスターターと直結しているわけではなく、ボタンを押すと自動でいろいろ動いてエンジンが始動します。航空機用語でいうところのFADECですが、R44もそうなっているべきと思います。保守的な航空機システムが垣間見えます。



Starter-On light : Out
スターターを起動していないのにスターターが回っていれば大問題です。

Set engine speed : 50-60%
Clutch switch : Engaged
Blades Turning : Less than 5 seconds

普通に起動すれば55%程度になっているでしょう。クラッチスイッチはそのまま流れるようにオンにするようになるでしょう。5秒以内にブレード回転開始となっていますが、実際にはすぐです。クラッチを入れる前から回り始める印象です。プリフライトの時にベルトの緩みをチェックすることになっていると思いますが、標準では押して4cmほどへこむ程度となっていますが、その状態でもある程度は力が伝わるはずです。

Alternator:ON
これも流れるようにオンにするようになります。オルタネーター入れ忘れでのバッテリー枯渇で事故になったという報告書見たことがあります。(飛行機ですが)
ちなみに、バッテリーが枯渇してもエンジンは停止しません。高度計も速度計も動きますが、ガバナーと回転計が停止します。とくにタコメーターが停止するのがよくないでしょう。


Oil Pressure in 30 sec : 25 PSI minimum
油圧チェックです。数値で指定してありますが、実際にはゲージの色で見ます。通常始動した瞬間にグリーンに入ります。もし始動後に油圧がなければ即座にエンジンをカットです。
R66みたいにN1の上昇とともに油圧がゆっくり上がるというようなことにはなりません。


Avionics, Headset : On
ヘッドセットをつけて、やっと静かになります。

Wait for Clutch light : Out
Waitと書いてありますが、ここで数分待つことになるでしょう。

Warm-up RPM :60-70%
まあウォームアップです。POHのどこかには、ウォームアップ中はキャブヒートを使用しろと書いてありました。理論的にはわかりますが、離陸時に戻し忘れそうなので自分はアプライしていません。
数分程度かかるでしょう。ちなみにR44(および最近の機体)はアワーメーターがコレクティブで起動されるため、機体のレンタル時にもウォームアップ時間はあまり気になりません。


Engine gages : Green
実際にはCHT(Cylinder Head Temperature)シリンダーヘッド温度が上昇するのを待つことになります。


Warning Light : Out
警告灯が点いていないのを確認せよ、です。当たり前ですね。


Mag drop at 75% RPM : 7% max in 2 seconds
これはマグネトを左右の片方にしたときの回転落ちが極端でないことを確認します。ツインプラグですが、どこかのプラグがダメになっているとここで回転数が一気におちるため引っかかるはずです。
なお、ポジションの並びは左から「OFF」「R」「L」「Both」となっています。テストはRからやりなさいと教わりました。というのがRを後でやると、戻した時にLにして離陸してしまう可能性があるかららしいです。十分ありうると思いましたので、自分はR,Lとしています。


Sprug Clutch check : Needles split
ここはヘリに特徴的なチェックで、スロットルを急激に閉じます。すると当然エンジンの回転数が落ち、連動しているエンジン&ローターの回転数の”針”が”別々に”動けばOKです。
ちなみにAstroとRaven1はパチっと針割れするものの、Raven2は割れにくいらしく、Raven2はかなり思いっきりスロットルを絞る必要があるとのことです。
また、地面が滑りやすいときには、スロットルを絞る瞬間に右ペダルを瞬間的に当てた方がよいです。結構機体が動きます。


Doors : Closed and latched
ドアを閉めるのは当たり前のようですが、書いてあります。

Limit MAP chart : Check
天井またはサイクリックにMAPチャートがあるので見ておけということです。つまり、どこまでパワーを使っていいかチェックするということです。
ちなみにサイクリックについているタイプは、チベットの寺の柱にあるお経みたいにクルクル回ります。

Cyclic/Collective friction : Off
Governor On : RPM 102-104%
ガバナーがOnで、そして80%までスロットルを開けると、あとは102%まで回転を自動的にあげてくれます。吸い付くように回転が上昇します。なお、スロットルはグリップにあるスポンジの後ろ半分を持つように指導されました。そこを持つとガバナーの動きが手に伝わってきてよくわかるとのことでした。たしかにその通りです。


Lift Collective, Reduce RPM : Horn/light at 97%
これはLowRPM Hornのチェックですが、コレクティブを上げろと指定してあります。これはコレクティブがフルダウンだとこの警告が鳴らないからです。ほんのすこし上げれば十分です。


WaringLight Off
警告灯が全部消えていることを確認です。


Area : Clear
周りに誰もいないことを確認して離陸します。




チェックリストというのは、おそらくミリタリーか航空機の世界でできたものだと思いますが、ミスを防ぐためによくできています。この通りにすれば落ちがないようによく練られています。
毎回手順に従ってきちんと実行することが事故を防ぐために重要だろうと思います。


20年前の訓練のとき、March空軍基地(?だったように思います)の管制圏を通過する際、トランスポンダーのアイデントを指示されました。数回アイデントを指示されたあとに「Your transponder is ON?」と尋ねられ、パッと見るとトランスポンダーの電源を入れ忘れていたことにやっと気づきました。やはりきちんとチェックリストを実行しないといけないと実感した出来事でした。昔のことですが、はっきり思い出すことができます。
まあ、その時は管制官に謝って普通にトランスポンダーを入れて飛び続けました。特に問題にはならなかったのですが、インシデントではあります。
ただ、チェックリストではトランスポンダーは”アビオニクス”と一塊にされているので、本来はRadio、トランスポンダー、VOR/DMEなどというふうに一操作が一項目になっているべきではあります。

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