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ロビンソンR22解説 3 各計器について [ヘリコプター]

ロビンソンR22の解説 3です。
主に計器の説明です。

それぞれの計器の説明です。



【1.回転計】
R22_meter_rpm.jpg

これはローターとエンジンの回転計です。左側がエンジンで右側がローターです。%表示ですが、100%でエンジンは2752RPM、ローターは540rpm(たしかそのくらい)です。
よく見るとグリーンアークの範囲が狭いのがわかると思います。100-103%しかありません。しかもエンジンはグリーンのすぐ外側がレッドになっています。

ちなみにアイドルは55%なのでそれ以下はメーターがありませんね。なお、この二つの針は普通は連動して動きます。当たり前ですがオートロの時はエンジンとローターが切り離されるため、当然別々に動きます。離陸前のチェックリストでも、スプラグクラッチのテストで「Needle Split」という項目があります。



【2.対気速度計】 
R22_meter_speed.jpg

今度は対気速度計です。外側がノット表示、内側がマイル表示です。グリーンが50ノット以上になっていますね。実際に50ノット程度でていないと安全ではないのでグリーンがそのあたりになっているのでしょう。超過禁止速度が103kt(ノット)であることがよくわかります。

また20ノット以下の目盛りがない事にも注意してください。これはヘリの場合、普通のピトー管方式の速度計では低速では、ダウンウォッシュのせいで全く当てになりません。そのため目盛りがないのです。実際には30ノット以上からが信頼できるようです。なおR22のピトー管は、コクピットの上のマストについています。

また、このメーターは「対気」速度であって「対地」速度ではありません。そのため表示は当然風に影響されますし、上空の空気が薄いところでは実際よりも遅く出ます。しかし、航空機が飛ぶと言う観点にたつと大事なのは対気速度なため、対気速度計のついていない飛行機はないと思います。

このメーターの原理は、本質的には圧力計です。進行方向に前向きに管を突き出すと速度によりラム圧(動圧)がかかります。それを動きのないところで測った圧(静圧、R22の場合スタティックソースの白いチューブがあります)と比較したらその差から速度が計算できます。



【3.昇降計】
R22_meter_vsi.jpg

昇降計?です。英語ではVertical Speed Indicator略してVSIと言います。これは高度の変化速度を表示するメーターです。毎分何フィート上がるか下がるかを表示しています。表示は*100Ft/分です。これが大事になってくるのは、とくにセトリングを警戒するときです。まあ、普通の降下では500以下ですね。また上昇は300あたりのことが多いですね。ちなみにオートロ中は-1500fpmなどになります。
なおR22はパワーがないので急上昇はできません・・。R44になるとかなりパワーがあるので、どんどん登れますが、あまり実感はないですね。やはり車とくらべて、ヘリは「フワフワ」しています。飛行機と比較しても、もっとそのような感じです。



【4.マニフォールド圧計&バキュームメーター】
R22_meter_map.jpg

R22_vacuummeter.jpg

これはマニフォールド圧計です。MAP計ともいいます。単位はinches of mercuryであり、インチ水銀柱と日本語では言うのですかね。なお1インチが25.4mmなので、30インチが760mmになります。

このような位置についています。
R22_MAP_meter.gif

このメーターはわかりにくいメーターだと思います。簡単に言えばエンジンの出力計です。自分の車にブーストメーターをつけておられる方ならまだわかりやすいかもしれません。
このメーターは絶対圧を表示しており、ゲージ圧(=大気圧との差の圧のこと)ではありません。なおこの写真を撮った時はエンジン停止中ですので、ただの大気圧計になっています。ちなみに1013hPa=760mmHg=29.97inchHgとなります。

わかりやすく説明するために、自動車用のバキュームメーターをあわせて載せてみました。これはゲージ圧で表示されており、マイナスで目盛りがうってあります。この方がわかりやすいと思います。単位は*100kPaですが、要するに「何とか気圧」表示と思えばほとんど正しいです。
写真では0を示していますが、これはエンジンがかかっていないときはただ大気圧を表示するわけですからこうなります。エンジンがかかっているときはマニフォールド内の気圧は下がります。これはこのメーターがスロットルバルブより下流にあるためです。つまり、スロットル全開のときは大気圧を表示するので0となり、アイドリングのときは気圧が一番低くなります。平たく言えばアクセルに連動して動くわけです。

対照的に、R22のMAP計は絶対圧表示なため、エンジンがかかっていないときはただの大気圧計となります。エンジンがかかっているときはスロットルの開き具合に応じて変化します。要するアクセルが開いているほど圧が上がる(ただし上限は大気圧。このときはフルスロットル)わけです。逆にいうと、MAPによりスロットルの開き具合(=出力)がわかります。
これを利用してR22ではMAPにより出力を制限しています。24.5インチのところにレッドマークがあると思いますが、R22では24.5インチで131馬力が出ます。そのためここが上限でこれ以上のMAPを使用してはいけません。
ただし勘違いしてはいけません。24.5インチ以上は使用してはいけませんが、高度の低いところ(=大気圧が24.5インチよりも高いところ)でコレクティブを引き上げれば簡単に上限を超えます。わたしもオートロのパワーリカバリーで30インチまで行ったことがあります。

なお、上でフルスロットルと簡単に書きましたが、フルスロットルというのはMAP上は外部の圧力と等しくなったという意味です。しかし、外部の圧力は高度や天気により変動するため、とっさに認識するのは難しいです。
フルスロットルということは、それ以上スロットルを開けない(つまり、それ以上トルクを出せない。)ことを意味するため、危険です。


余談ですが、35インチまで目盛りがありますがいつ使うのか不思議です。たとえば死海で飛ぶなら、標高がマイナス400mなので気圧は32インチほどになります。そういう相当特殊な状況でないと必要性がないような気がします。まあ、このあたりの議論は無過給(自然吸気)エンジンならではです。もしターボエンジンではMAP40インチなどと言う状況はごく普通のことになります。


【5.高度計】
R22_meter_alt.jpg

 高度計(アルティメーター)です。高度計は本質的には気圧計です。画面の表示は80ftですね。短い針が1000ftで長い針が100ft単位をあらわします。右の2と3の目盛りの間にある小さい数字は補正用の目盛りです。ATISなどで「QNH2997inch」といっていますが、こういうときは29.97を示すようにノブを回すと現在の正確な高度を示すようになっています。
ただ、普通は離陸場所の高度を直接入力して調整することも多いです。実用上それで充分です。知らないところではATISを聞いて合わせるようにします。

なぜこのような仕組みが必要かというと、この計器は気圧を高度に変換しています。しかし天気により気圧は変動します。つまり気圧が低ければ、実際の高度よりも表示は高くなります。逆もまた然りです。これを補正するためです。



【6.水平儀?姿勢指示器? Attitude Indicator】
R22_meter_ArtificialHorizon.jpg
 
アティチュードインジケーターです。姿勢表示器とでも言うのでしょうか。機体が地面に対してどういう姿勢になっているのか表示する計器です。きわめて重要な計器です。

この計器の重要さはわかりにくいと思いますが、ある意味もっとも重要な計器といっても過言ではありません。(なお、飛行機なら最も重要な計器は対気速度計でしょうか?)

これは要するに「姿勢を表示する」だけの計器ですが、航空機ではよく姿勢がわからなくなります。
良く知らない人の場合は「そんなわけないだろ。外の景色を見れば姿勢などだれでもわかるだろう。」と思う方が大半だと思います。私もはじめはそう思っていました。しかし、そんなことは断じてありません!
いかに簡単に姿勢がわからなくなるかは体験しなければわからないと思いますが、あっというまです。すごいスピードで落ちていても一定速で落ちていれば重力は1Gであり感じることはできません。
計器飛行の教科書には「Rely on your instruments」とはじめに書いてあると思いますが、これこそが計器飛行(計器飛行というよりは非有視界飛行というほうが正確か)の真髄ではないかと思います。

なお、右からでてきている赤白のしましまの棒は停止中のインジケーターです。内部にはジャイロがあるため、ジャイロが停止しているとき(つまりこの計器が動いていないとき)にはこの棒がでてくるようになっています。



【7.定針儀 Heading indicator, DG(Directional Gyro)】
R22_meter_Directionalgyro.jpg
 

機体の向きを表示する計器です。「DG」といったりするようです。要するに、ただの「コンパス」といえると思いますが、情報をジャイロから取る仕組みになっています。最初は方角を指定する必要があります。右の方に出てきている赤白の縞々棒はやはり計器の停止サインです。
実際にはマグネティックコンパスは初期設定に使うくらいです。マグネティックコンパスは加速度や機首の上げ下げにも指示が影響されますので、実際に飛んでいるときにはこちらをメインに使うことになるでしょう。

なお、R22のマグネティックコンパスはスクリーンのど真ん中の特等席についています。例のスリップを感知するヒモのあたりです。





「新航空工学講座 :航空計器」


いろいろ説明してきましたが、なかなか計器の説明はわかりにくいです。本で勉強するのもいいですが、フライトシミュレーターをつかって実際の動きを勉強したほうが早いかもしれません。

ただ、それでも本は必要とおもいますので紹介しておきます。
題名のとおり、航空計器だけについて解説してある本です。エンジンの構造などは車(30年前のもの)と飛行機は同じですが、計器については全く異なります。
そのため、最初はなじみにくいと思います。実際には合理的かつわかりやすくできています。

原理、構造など詳しく書いてあります。この項がわかりにくかったらこちらを読むと理解しやすいかもしれません。解説本としてはとても良くできています。


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