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ロビンソンR22解説 2 計器盤について [ヘリコプター]

ロビンソンR22の解説 2です。
主に計器盤(車でいうところのインパネ?メーターパネル?)などについての説明です。




【計器盤 その1】
ロビンソンR22 HPのメーターパネルです。古い機体なので5つ穴です。今は5穴は珍しいのではないでしょうか。AIがない機体というのが許容されていた時代ということです。

 R22_panel1.jpg

一番上の段は左からVSI(昇降計)、ASI(スピードメーター)、ローター&エンジン回転計(左側がエンジン、右側がローター、どちらも%表示)
その下の段は左からアルティメーター(高度計)、マニフォールドプレッシャーゲージ(MAP、いわゆるバキュームメーター)
左右に散らばっているのは警告灯です。赤は緊急着地、黄色は準緊急着地です。普通の機体では警告灯は上側にありますが、意味は同じです。

メーターの表示は、基本的には緑色の表示が普通に使って良い領域で、黄色は注意、赤は禁止領域です。マニュアル(POH)に文字で書いてあることが簡潔に表示してあるだけです。

下の方に固まっているのは吸気(マニフォールド)温度計、シリンダヘッド温度(CHT)、油圧、アンメーター、その他です。あと時計です。

並んでいるスイッチの中で一番大げさなカバーがついているものがやつがクラッチスイッチです。(いわゆるミサイルスイッチと呼ばれる形式のものです。)
クラッチをディスエンゲージしてしまうとパワーが断たれる上に、エンゲージするのに数分かかりますので、空中でクラッチをいじるのは非常に危険です。そのためカバーがついているのでしょう。
あとはストロボライトとかオルタネーターとかのスイッチで、右下と左下にちょっと見えているバーがラダーペダルです。

どこかに、「R22は極端にVFR(有視界飛行)に特化したヘリ」と書いてありましたが、この計器の選択をみればそれがわかると思います。特に、この機体はかなり初期型なので計器がこれだけしかついていません。ある意味フランクロビンソン(設計者)のコンセプトを色濃く反映しているようです。

もしこの機体で完全に雲の中に入ってしまったら相当まずいでしょう。人生の終わりだと思います。
アティチュードインジケーター(AI)がないので自分の姿勢がまったくわからなくなると思います。なお最近の機体はその程度の計器はついています。 




【計器盤 その2】
やはりR22 HPのメーターパネルの下半分です。
R22s_panel2.jpg

計器の下半分です。スイッチ類の一番右にある、いかにもキーを差しこむような場所はやはりキーを差し込む場所です。
車とまったく同じシステムで、エンジン始動は一番右に回しきることで行います。手を離すとBothポジション(要するにON)に勝手にもどります。
Bothというのはマグネトのことで両方で点火している状態のことです。普通はここを使います。ポジションは左からOFF、RIGHT、LEFT、BOTH、STARTってなかんじです。(うろ覚えですが)Right、Leftポジションでは左右どちらかのマグネト1個で点火している状態になります。片方のみでもパワーが少し落ちるくらいで普通に飛べるそうですが、通常時にそんなことをする理由はありません。

このポジションの主目的は点火系のチェックにあります。始動手順では、BothからRight、BothからLeftという風に切り替えて2秒間に7%回転数が落ちなければOKという風になっています。
もしどちらかのマグネトやプラグがおかしければ、故障した側単独で点火することになり失火するシリンダが出てくるためトルクが下がり、急激に回転数が落ちるから分かるという仕組みです。ちなみにセスナ172なども同じシステムです。(正確には、ロビンソンが172のシステムを流用しています。)

ラジオ(無線機)とトランスポンダーが上下に並んでますね。ごくふつうの代物です。ちなみに1200はVFRコードであり、普通はこれを使います。
タワーに「Squawk 4231」とかって指示されますが、たとえば「Radar Service Terminated ,Squawk VFR, Frequency change approved, Good day」といわれたらレーダーでの監視はここで終わりなのでトランスポンダーを1200に合わせろ、無線の周波数も変えてよし、さいならという意味です。

見にくいですが、一番右下に見えている赤い(退色しており、この写真では赤く見えませんが)のが超重要なミクスチャーです。
何が重要かといってここは下手にいじるとエンジン止まります。エンジンのカットもこのノブで行います。写真の状態が一番引いた状態でこれがフルリーンです。飛んでるときは一番押しこんだ状態のフルリッチです。
セスナなどの飛行機はミクスチャーの微調整をするみたいですが、R22では常にフルリッチです。分かりにくいですが、ノブにかぶせてあるプラスチックのわっかが「ミクスチャーガード」です。これはローテクの塊R22を象徴するような部品です。フルリッチではノブがこのわっかの中に隠れますので、これを外さないと引けない構造になっています。誤操作を防ぐためです。

また、レシプロエンジンはエンジンのカットをミクスチャーで行います。昔はなぜか不思議でした。車では、エンジンのカットは燃料の供給停止と点火の停止にて行い、それについては全く違和感はありません。
航空機用エンジンのエンジンカットがミクスチャーをリーンにすることで停止する理由は、「停止の信頼性を確保するため」らしいです。この点は、航空機用エンジンの「信頼性の高さ」の裏返しですが、電気がなくても燃料ポンプがなくても(最初からありませんが)、とりあえずエンジンは止まらないようになっています。
逆にいうと、点火系にしても燃料系にしても、エンジンを回らないようにするという意味では「信頼性が低い」らしく、エンジン停止時には、どうやっても点火しないように空燃比を下げるらしい。
この理由には納得しました。あとは、エンジン停止時にシリンダー内をクリーンにするという意味もあるらしいです。




問題はこの重要なミクスチャーの左隣にトリムノブがついていることでしょう。巡行中はR22はサイクリックを右前に押しておかないとまっすぐ飛びません。そこで、このノブを引くとバネでサイクリックを勝手に右に押してくれますのでだいぶ楽になります。
前後方向は腕をひざにつけておけばそんなにつかれませんが、左右方向は結構大変なのです。私はしょっちゅう引いてました。しかし戻すのを忘れてそのままホバーしてしまったりするんですよね。

ちなみにただ引けばいいのですが、けっこう堅いです。アメリカ人にとっては問題ないのかもしれませんが、最初引いた時は「これは本当に引くものなのか?実は横に押すとか?」と思いました。しかも引いた瞬間にサイクリックが揺れて機体がよれよれっとしてしまいました。

なお、隣にあるミクスチャーを間違って引いてエンストし、そのままパニクって墜落という事故が起こっているそうです。これは非常に分かる気がします。
本人の責任といえばそれまでですが、ここは設計が悪いですね。マニュアルにも、トリムを引く時はスティックの左側から手を周りこませて引けと指示があります。

セスナではもし空中でミクスチャーを引いてエンストしたとしてもそのままミクスチャーを押しこめば、風圧でプロペラが回り勝手に再始動します。(と飛行機パイロットが言ってました。私は見たことはありません。でも構造上そうだと思います)
ただしR22の場合、同じことをやってエンストした場合ミクスチャーを再度押しこんでもエンジンは再始動しません。なぜならスプラグクラッチによりエンジンとローターが切り離されるからです。しかも、そこでスターターを回すより先にオートロに入らなければなりません。数秒以内にコレクティブを下げないと、すさまじい勢いでローター回転が下がるからです。とりあえずコレクティブをフルダウンにしてオートロに入ります。それからスターターを回せばエンジンは復活します。

R22で間違ってミクスチャーを引いたときのヤバさが少しは伝わったでしょうか・・。余談になりますが、マニュアル(POH)の最後に羅列してあるSaftyNotice(SN)というのは実際の事故の教訓を書いてあります。だから、あそこに書いてあることは全部実際の事故の結果です。あまりひとごととは思えませんでした。


「追加」
もう一度渡米してR22に乗ってきましたが、その時に乗ったR22はミクスチャーが時計のすぐ下(VORのすぐ上、クラッチスイッチの左)についていました。最初は戸惑いましたが、どう考えてもその方がマトモな設計に思えます。ちなみにミクスチャーガードはありませんでした。

またその機体にはオートキャブヒートがついていました。ロビンソン社のページで存在は知っていたので、マニフォールド温度をモニターして自動でキャブヒートを入れる装置と勝手に想像していたら全然違いました。
コレクティブを下げると”機械的に”連動してキャブヒートノブが上がるだけの代物でした。やはりローテクでした・・。自動で上がらない様にロックすることもできます。もちろん金具で固定するという単純な仕組みです。 

私の訓練は真夏で、温度が40度くらいありました。実際のエレベーションは大したことないのにDensity Altitudeが4000ftなどの状況でした。しかも以前は機体がR22 betaでエンジンがO-320だったのでたまにパワー不足を感じていました。でも今回は春で温度が低く、機体もBeta II(エンジンはO-360)のせいかすごくパワフルに感じました。アイドリングでもMAPがかなり下がる機体だったのでエンジンのコンディションも良かったのでしょう。どんどん上昇できるので勝手に喜んでいました。パワーがあると気持ちいいですね。



【計器板 その3】
R22 ベータIIのパネルです。 一応最新式ということにはなると思います。 

この機体は新しいベータIIです。9個穴パネルがついており、ディレクショナルジャイロ(DG)やアティチュードインジケーター(AI)などもついていますね。VORなどもあります。新しいからきれいです。
R22_panelb.jpg

サイクリックスティック(いわゆる操縦桿)も見えます。R22はかなり特殊な形をしています。普通のヘリは左右各々に床からスティックが生えているのですが、R22は真ん中から1本でており、それを左右に分けるようになっています。これも軽量化のためでしょう。なお右席は機長席なのではずれずれませんが、左席のスティックははずすことができます。
この機体はミクスチャーが上の方についています。トリムから離れた位置についていますね。

ラダーペダルが見えますね。ペダルと言うよりはラダーバーといったほうがいいような構造をしています。左右が連結してあり、同じ動きをします。なお、左席のペダルは取り外しできます。




【計器板 その4】
計器盤の拡大です。7穴モデルです。
R22_meter_all1.jpg

計器の説明は別稿に書きますので割愛します。
上の警告灯の説明をします。

[Clutch]
クラッチのアクチュエーターが動作しているときに点灯します。もちろんクラッチをエンゲージあるいはディスエンゲージしたときには点きますが、そのうち止まりますので消えます。
あと、ランアップして飛び立った直後ぐらいに一瞬だけ点くこともあります。これはベルトを張りなおしているためです。よくあります。すぐ消えれば問題ありませんが、つきっぱなしだとベルトが1本切れている可能性もあります。

[MR TEMP]
メインローターギアボックスの温度警告灯です。そのままです。

[MR CHIP]
メインローターギアボックスのチップディテクターの警告です。ギアボックスには磁石が付いており、ギアのカケラなどが吸い付くようになっています。そこにわずかな隙間をつけて電圧をかけておきます。そうすると、金属のカケラが吸い付くと電流が流れるという仕組みになっています。要するに、ギア欠けや重大なトラブルを検出するための装置です。超ヤバイ。

[STATER ON]
スターターが回っているときのライトです。

[TR CHIP]
上記のテールローター版です。これも相当ヤバイです。

[LOW FUEL]
まんまですね。燃料の残量警告です。ちなみにマニュアルによると、このランプが点いたときの残燃料は5分らしいです。

[LOW RPM]
回転数が下がったときの警告です。 警告音もします。ちなみにこの警告音のトーンが一定ではありません。微妙にピッチが上下し、妙に音楽的です。 Youtubeでオートロの動画をみればよく鳴っています。雰囲気としては、セスナ172の失速警報とそっくりです。




【計器板 その5】
R22_meter_all2.jpg


計器盤の中ほどです。

左上の温度計は外気温計ではなく、吸気温度計です。キャブのためキャブレーターアイシングが起こりえます。そのためについています。これもいろいろ問題のある計器で、計測場所がおかしいとかいろいろ言われていました。

その下は普通の時計です。

メーターは上段左が電流計、その右が油圧計です。アメリカの機体なので単位はPSI(ポンド/平方インチ)です。アメリカ社会はまったくSI単位系を無視しているのがここにもあらわれています。

中段は左が燃料計(補助燃料タンク)、右が油温計です。

下段は左が燃料計(主燃料タンク)、右がシリンダーヘッド温度計(CHT)です。
なお、クールダウンの際にはこのCHT計を見ながら下がるのを待つようになります。

一番右上の警告灯は下のようになっています。
[ALT] 高度の意味ではありません。オルタネーターの警告灯です。
[OIL] 油圧だったか油量だったかの警告です。詳しくは忘れました。
[GOV OFF] ガバナーを切るとこのランプが点きます。ガバナーを切ることはあまりないとは思います。

なお、下に並んでいるスイッチの説明をします。
[NAV LTS] ナビゲーションライト
[STROBE] ストロボです。ピカッ、ピカッと光るあのライトです。
[CLUTCH] 字が見えにくいですが、カバーがついているのがクラッチのスイッチです。これは重要なスイッチです。そのためカバーが付いています。クラッチのエンゲージ、ディスエンゲージを切り替えるスイッチですが、具体的にはスプラグクラッチのすぐ後ろについているアクチュエーターが上下します。その結果ドライブシャフト(?)全体がフレックスカップリングを支点に上下します。
[ALT] 発電機のスイッチです。
[MASTER BATTERY] 要するにメインスイッチのことです。

なお、その右はマグネト選択とスターターのスイッチです。車の鍵穴とまったく同じ感じです。


「MAP18インチ以下では吸気温度計(CAT Gauge)を無視してキャブヒートを使用せよ」との指示があります。これはすこし説明が必要でしょう。
オレゴンチョッパーに書いてあったのですが、R22の吸気温度計のセンサーはスロットルバルブの上流にあるそうです。つまり、スロットルバルブで温度が下がる前の温度を測っているわけです。吸気温度計は結局キャブアイス防止のためについているはずですが、これでは意味がないわけです。
そうすると、指示としては18インチ以下なら(これはスロットルがかなり閉じ気味であり、要するにスロットル下流では温度がかなり下がる条件という意味です)キャブヒートを無条件に使えということになるわけです。訴訟対策と言う感じの注意書きですね・・。


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