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「トランスミッション進化論」モーターファンイラストレイテッド No21 [クルマ関係]

モーターファンイラストレイテッドのNo21が出ました。
今回は「トランスミッション進化論」と銘打ってトランスミッションについて特集してあります。

いつもながら良い出来です。すばらしい。車のメカニズムに少しでも興味があれば買って後悔はしないと思います。



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それでは中身を紹介してみます。今回のトランスミッション編は、ATとCVTに特化しています。


実は同じシリーズのNo8でもトランスミッションの特集をしています。



このときはMTの話もありましたし、DCT(Dual Clutch Transmission)に傾倒している印象でした。CVTはばっさり切り捨ててありました。
CVTについては「ラバーバンドフィール」だとか、効率が悪いとかでこれからは消えていくといった記事を書いてありました。しかし、これから消えていくトランスミッションが、なぜ現在の日本では増えているのでしょうか。
CVT(ベルト式)の伝達効率が悪いことは周知の事実ですが、車はトランスミッションだけで走っているわけではありません。エンジンとの統合制御や、人間を含めた「マン・マシン系」として捉える必要があります。そのあたりの議論が全く出てこないので、よっぽどCVTが嫌いな人が書いたのであろうと感じ、説得力のない話だと思って読んでいました。
ATの弱点に「変速ロジックが既知の定石に縛られがち」とありますが、それはATの機構の問題ではなく、設計哲学の問題でしょう。哲学は正しいとか間違っているとかという次元の問題とは異なりますので、それを持ち出すのはお門違いです。
またCVTの弱点に「変速を繰り返すほどエンジンを加速して燃料消費が増える」とありますが、ではエンジンを加速しないように変速すればよいのではないでしょうか。そもそも変速を繰り返す、云々はCVTでもATでも変わりません。

今回(No21)の特集では、そのあたりに対する強烈な皮肉が行間から伝わります。「ラバーバンドフィールを云々は時代遅れの議論」と書いてありますが、これは露骨にNo8の著者に向けてのメッセージでしょう。あのNo8の記事はCVTやATの開発者には相当頭にきたと思います。
わたしはCVTの車を持っているわけではありませんが、以前ヴィッツのCVTを乗ったときにはまったく違和感はありませんでした。ラバーバンドフィールなどどこにという印象でしたので、納得はできます。

今回の記事では、欧州、日本、北米の使用環境の違い、ユーザーの好みの差、エンジンとの制御、ドライバー心理とトランスミッション制御の関連など多面的な解説がしてあります。

CVTの利点は制御しだいでいかようにもチューニングできることでしょう。現時点でCVTが(多段)ATよりも優れているかどうかはわたしにはわかりません。ただし制御の自由度に関してはCVTの方が上だとはいえると思います。(つまりポテンシャルを秘めているかもしれないということです)

まあ、はっきりいってNo8より今回のNo21の方がATやCVTに関しては良いです。No8はDCTに偏っていますので、両方読むのをお勧めいたします。ただ、No8はMTとDCTに関してはとてもよい本です。




レクサスLS460用の8速ATの開発記事は良かったです。6ページにわたって詳細に解説してあります。詳しくは読んでもらったほうがよいので書きませんが、セルシオ用から比べて騒音を10dB減らしたなどととんでもない話が出てきます。
まあ気合の入ったことです。俄然LS460に乗ってみたくなりました。今度試乗に行ってきます。



DCTの元祖 DSGについても記事があります。現在は湿式クラッチの6速ですが、乾式の7速が出るようです。6速だろうが7速だろうがどちらでもよいですが、乾式はすごいです。トルク容量が下がったようですが(当然)、重量が20kgも軽減できたとのこと。
日本での使用状況にDCTがマッチするのかどうかは知りませんが(むしろ日本ではIS-FのようにトルコンATを磨く方向に行く?またはCVT?)、少なくともトランスミッションに関して引き出しが増えたのは確かでしょう。
また、DCTにモーターを加えてマイルドハイブリッドにした構成には興味が沸きました。発進停止が少なく、高速巡航が多い状況では重量とコストへの跳ね返りを考慮した場合の最適解のひとつかもしれません。




あとはホンダのHFT(Honda Friendly Transmission)です。全く意味がわからない単語ですが、要するに油圧ポンプ+油圧モーターで構成されたCVTです。現在はDN-01というバイクに採用されています。このバイクに関しては、近いうちに試乗に行くので改めて感想を書きます。

油圧を介在させますので、伝達効率が高いわけはないと思っていましたが、全負荷での伝達効率は75-88%だそうです。かなり低いと言わざるを得ませんが、ロックアップすれば95%だそうです。これなら通常のギア+チェーンに遜色ないでしょう。
いずれにしても、高トルク容量とコンパクトさを両立するにはある意味最適の構成だと思うので、試乗がとても楽しみです。


あとはトラックなどもありますが、長くなるので省略します。ただ、ひとつだけ印象的なところがあったので引用してみます。それは「エンジニア諸氏が欧州は手ごわい、GMは手強いと語る言葉を経営陣は理解しているのだろうか、わたしは不安に思う」というところです。
そうかもしれませんね。そういうことを考えずにコストのことばかり言う経営者はいそうです。(実際は知りません。あくまで想像です)
深い言葉です。


CVTについてはこのあたりが参考になると思います。「CVT入門」は良い本です。

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