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「スーパーカー誕生」紹介 [クルマ関係]

本屋をめぐっていて良い本を見つけたので紹介してみます。

オートカーなどでおなじみの沢村慎太朗氏の本ですが、熱い本です。ついでに厚い(800ページ)ですし、高い(5000円)です。それでも大枚をはたいて買う価値のある、いい本だと思います。

スーパーカーといわれる車たちの歴史を縦断的に纏め上げています。イタリアでエンジニアにインタビューしたりもしています。

スーパーカー誕生



アマゾンではこちらです。



この本に流れている哲学は「パッケージング」です。最初から最後まで重量配分と重心高の話が続きます。エンジンパワーがどうとかいう話はあまり出てきません。

ここまで徹底した本は初めて見ました。もちろんパッケージングについて型どおりの説明をしている本はたくさんありますが、この本はいわゆるスーパーカーといわれる車を題材にしてパッケージについて詳しく論じています。

あとはその車が誕生した背景や、それを設計したエンジニアなどについても非常に詳しく説明してあります。

具体的に取り上げられている車はいろいろありますが、もっとも面白かったのはランチア ストラトスのところです。これは往年の名ゲーム「セガラリーチャンピオンシップ (セガサターン)」に隠し車種として出てくるので知っている人も多いと思いますが、あの車がいかに極端で割り切った設計をしていたかが詳細に解説されています。エンジン供給の裏話などもありそうな話です。

ランボルギーニのトランスミッションがキャビンに突き出すすごいレイアウトもはじめて知りました。パッケージングとしては巧みですね。

全体的に熱い文章が続くのですが、もっとも熱い部類に入るのはNSXのところです。トランクにゴルフバッグが入ることが批判されたりしていましたが、結局重量配分のために必然的に横置きになったなどの解説がされていました。
最初はメカニズムやパッケージングの話なのですが、だんだん哲学というかホンダという会社の社風、NSXがスーパーカーの潮流に取り残されたことなどの話など、メカと関係ない方向に話が進んでいきます。書いているうちに筆者が熱くなっていっているのがよくわかる、妙に迫力のある文章です。この章は好きです。

マクラーレンF1の章もなかなか良いです。これは自動車史に燦然と輝く名車だと思いますが、細部のこだわりについて延々と書いてあります。見れば見るほどすごい車ですね。
マクラーレンF1の運転席が中央にあるのは、左右の重量配分を適正化するためだと思っていました。しかし実際にはトーボードとタイヤハウスの干渉を防いでパッケージングの自由度を高める目的もあるとはまったく気づきませんでした。いわれたらその通りだと思いますが。


911やボクスターのところも興味深いです。もともと996(先代911)、986(先代ボクスター)を共通プラットホームとして開発して、そのしわ寄せが996に来たとか。996のエンジンのクランク高がやたら高いというのも初めて知りましたが、ありそうな話です。996,986プロジェクトは「当初から危険をはらむものだった」というのはいい得て妙ですね。

ちなみにケイマンのことも少し出てきます。ミッドシップの場合はメンテナンスのため、エンジンを上か下かに抜けるような構造にする必要があり、そのためホイールベース内に大穴が開きます。その影響でボディ剛性が保ちにくく、さらにケイマンはハッチゲートでさらに剛性を落としていると断じてありました。まさにその通りでしょうね。巧妙に997と序列をつけてあります。
ちなみケイマンは下抜きで、キャビン内からはエンジンを見ることはできません。(ハッチを開ける必要があります。)




非常に厚い本ですが、一気に読みきってしまいました。クルマのパッケージングに興味がある、スーパーカーに興味があるというような方は一度読んでみることをお勧めします。
しかしとても良い本だと思いますが、読者を選ぶ本でもあります。好きな人にはたまらない本ですが、興味のない人には何が書いてあるのが意味がわからないでしょう。

それでも繰り返しになりますが好きな人には強く勧めます。アマゾンでの書評はまったくその通りだと思います。
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