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ロビンソンR22解説 12 オートローテーション [ヘリコプター]

ロビンソンR22の解説 12です。
この項ではオートローテーションについて記載します。


オートローテーション自体の説明をする前に飛行機の話をしたいと思います。

質問:飛行機でエンジンが止まったときはどうするでしょう?

この質問に対する答えは「滑空する」ということになります。もちろん細かいことはたくさんあります。燃料コックやミクスチャーを確認するとか、着陸場所の候補を探すとかほかにすることはたくさんあるでしょうが、基本的には機首を下げて降下を開始し、速度を保つのが最初の手順です。
これに関しては、皆さんはあまり違和感がないのではないでしょうか。エンジンがなくても滑空できることに関して違和感はないと思います。紙飛行機と本質的には同じです。

それでは次はヘリです。

質問:ヘリコプターでエンジンが止まったときはどうなるでしょう?

答え1:そのまままるで石のように落ち、地面に激突する。
答え2:滑空できるが、まっすぐ降りるだけで操縦はできない。
答え3:滑空でき、滑空中にも操縦できる。ただしゆっくり接地はできない。
答え4;滑空でき、滑空中にも操縦でき、ゆっくり接地できる。




一般人の典型的な答えは1です。エンジンが止まったら、そのままひゅーんと落ちると思っている人が大半だと思います。すくなくとも私の周りにいる素人はみな1と答えました。
本当の答えは4です。ヘリでも滑空できます。その滑空のことを「オートローテーション」といいます。(略してオートロ)



オートロの説明は言葉では難しいです。文章で何度読むよりも、乗って体験すれば一発でわかることですが、それも極端だとおもうのでyoutubeで動画を見てみてください。
なお、Low RPMのホーンの音もフルタッチオートロのときには聞こえてきます。(イヤな音)

YouTube - search "Autorotation"
https://www.youtube.com/results?search_query=autorotation


上で飛行機と同じように滑空できると書きましたが、ヘリの場合降下率はかなり大きくなります。飛行機の極端な場合としてグライダーを取り上げますが、グライダーは滑空比(Glide Ratio)は20-50ほどあり、かなり長く滑空できます。(滑空比20なら高度1kmのところからなら、20km遠くまで到達できるということ)

なおR22の場合大体滑空比は3-4程度です。つまり対地高度500ft(150m)なら、1500-2000ft(450-600m)しか届かないということです。
ただし、ヘリの場合は最後にフレアをかけることにより、降下速度も前進速度も減らすことができます。ベストの場合には止まった状態でふわっと着陸できます。理論的にはどこでも着陸できることになります。(ただ、緊急時にはそんなにうまくはいかないのが実情でしょう。)


再掲ですが、H-Vダイヤグラムを掲載してみます。高度か速度がないと安全なオートロができないことが表示されています。特に問題になるのが速度で、速度があればよほどの低高度でない限り大丈夫ということになっています。このチャートは、速度がない場合は、加速するために高度が代わりに必要になるという意味です。
R22_HVcurve.jpg




R22での実際のオートロ(の練習)の手順を書いてみます。

1.スロットルを絞る
要するにコレクティブを握っている左手のグリップを、親指側に力いっぱいまわします。オーバートラベルスプリングにめり込む位。これをディテント位置といいます。
エンジン回転が落ち、メーター上でエンジン回転数とローター回転数が分離します。つまり、ローターシステムからエンジンが切り離されます。


2.コレクティブをフルダウン
一番下までスムーズかつ確実に下ろします。絶対に一番下までおろします。


3.アフトサイクリック、右ペダル
スロットルクローズ、コレクティブダウンだけをすると機首は左下を向きます。これはエンジンの反動トルクがなくなることから左を向き(ローター左回転の場合)、コレクティブダウンにより下を向く(R22の特性)ため、右ペダルを踏むとともにアフトサイクリックを当てます。実際にはコレクティブ下げとほぼ同時に当てます。そのうち同時に体が動き始めます。
外の景色を参考にして、姿勢が変わらないようにオートロにエンターします。計器ではなく外をみるように指導されました。


4.速度チェック
R22のマニュアル(Pilot Operating Handbook)によると、オートロ中の速度は65ktに指定されています。R22のパワーオンの最小降下率速度(Vy)は53kt、最大到達距離速度(Vx)は83ktですが、その間ということでしょう。
姿勢を調整して速度を65ktにします。うまく調整できないときでは、速度は遅いよりは速いほうがまだマシです。


5.滑空
コレクティブダウン、65ktで滑空します。
大体ベストでも毎分1500ftくらいで降下するので、かなり早く降下する感じです。とくに外から見ていると落ちてくる感じです。
良く勘違いされますが、一定速度で落ちている場合は重力は1Gです。ジェットコースターで落ちる瞬間のふわっと重力がなくなる感覚はエンターの一瞬しか感じません。
なお滑空中には操縦できます。降下を止めることはできませんが(速度一定のままであれば)、ターンもできるし速度の調整もできます。
この間に、風や現在の距離を勘案してどこに降りるか場所を決め、そちらに機体を持って行きます。右ペダルは踏みっぱなしになります。機体は落ち続けてはいますが、サイクリックも効きますし、普通に操縦できます。


ちなみに、一定の滑空を維持していると大体ローター回転数が上がってきます。じわじわ上昇するのが普通なので、MAPで1インチ分くらいコレクティブを上げると良いでしょう。
パワーオフ時ではローターRPMは90-110%(459-561 RPM)までOKなので、その範囲に入れます。
なお、コレクティブをあげるとRPMはすぐ下がりますが、コレクティブを下げたからといってすぐにRPMが上がるとは限りません、RPMを上げるのに一番効果的なのはアフトサイクリックですが、速度が落ちるので、そうしてはならない状況の時もあります。
まあ、ターンなどして降下率を上げればRPMはそのうち上がってきます。(ただし高度は失います。)
なお、LowRPMホーンは97%以下で鳴ります。(初期のモデルでは)ホーンが2つあるらしく、ハモったような妙な音がします。(確認したい方は、Youtubeなどの動画をご覧ください。)


6.フレア
対地40ftくらいになったら、ゆっくりアフトサイクリックをあててフレアをかけましょう。そうするとローターRPMが上昇するとともに、降下率が下がり前進速度も止まってきます。
ある程度前進速度がなくなったら機体を水平に下ろし接地します。
ここが難しく、一気にフレアをかけると、浮いてしまいます。次の降下では速度を失っているため危険です。Jentleなフレアで、フワーっと減速し、高度が上がらないような感じでソフトにフレアをかけるのがコツのようです。
あとはテールの接地にも気を付けないといけませんが、一応テールローターのガードはあります。


7.パワーリカバリ
機体を水平にしてスロットルを開け、ホバリングに移行します。オーバーMAP(パワー使いすぎ)にならないように気をつけてください。また油断すると大抵機体が右を向くのでペダルを踏みます。
速度が速いときは相対的に風の影響を受けにくいですが、止まると受けます。それらも補正しましょう。
あと気温が高いときは、キャブヒートを引いたままだとオーバーMAP気味になったりします。キャブヒートは戻しましょう。(戻しにくいですが。)


7.接地(フルタッチダウンの場合)
機体を水平にして接地します。接地の時にコレクティブをゆっくりいっぱい上げます。ローターに残った運動エネルギーで、機体の降下を止めるわけです。
ただしR22は低慣性ローターなので、コレクティブを上げても降下はあまり止まりませんので、前進しながらガガガガと接地するようになることが多いでしょうか。10-20ktくらいで前進しながら接地したほうが必要パワーが少ないのでスムーズに接地できるかも。
ただし、接地の際はペダルで前向きに維持しましょう。そうでないとスキッドが引っかかってこけます。ただ接地時にもローターがかなりの重量を支えており、地面効果もあるので想像するよりもはるかに転びにくいです。
つまり、トランスレーショナルリフトと地面効果を最大限に使用して接地することになります。
うまくやればふわっと接地できるらしいですが、自分は実機でフルタッチをしたことがないので詳細についてはベテランパイロットにお聞きいただくか、動画でもどうぞ。



わたしは実際にオートロを強いられたことはありません。またきちんと整備をしていればエンジンが止まるのはそうそうあることではありません。ただR22の場合回転数が70%程度まで落ちるともう上昇することはないらしい(つまり死亡)。

つまりエンジンが停止したら即座にコレクティブを下げることが必要です。その余裕は数秒しかないそうなので、そこが不安です。

実際に上空でエンジンが停止したときに、私は自分と機体が無事で帰ってこられる自信はありません。少なくとも機体は壊れると思います。接地の際に止まれるからといっても、硬くて平らで、前後に電線などの障害物がない広い場所などというのはそんなにないでしょう。
ただ機体を壊してでも、地面のものを壊しても、自分は無事に地面にたどり着くことができれば御の字としないといけないと思います。
ちなみにオートロの訓練はみっちりされると思います。最初はホバリング、その次トラフィックパターン、最後はオートロでほとんどの訓練がこれらで占められると思います。

訓練といっても、華々しいような部分はあまりありません。きちんとトラフィックパターンを回れて、オートロができるという基本的なことを繰り返しやるのみです。(ホバリングはできることが前提です。)

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