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ロビンソンR22解説 13 ロビンソン工場訪問 [ヘリコプター]

ロビンソンR22の解説 13です。
製造会社:ロビンソン社のファクトリーツアーです。
(訪問はかなり前です)

【Robinson Helicopter Company本社正面】
R22_RHC_front.jpg



【ロビンソンファクトリーツアー】
前からロビンソンヘリコプター(RHC、Robinson Helicopter Company)の工場の見学をしたいと思っていたので行ってきました。ファクトリーツアーと名前が付いていますが、単なる工場見学です。

ロビンソンの本社(トーランス空港のすぐ南)に電話をしたらすぐ予約できました。一応曜日は決まっているとのことなので、メールか電話で聞いてみるとよいでしょう。ただ見て回るだけなので人数制限はあまり厳しくないと思います。

私のときは私を含めて二人でしたが、もう一人はアメリカ人でシコルスキーのテストフライト部門のエンジニアでした。
何のために来たのかよくわかりませんが、ロビンソンとシコルスキーはまったく競合していない(言ってみればハイエンド専門メーカーとローエンド専門メーカー)ので説明の人も気楽に説明していました。(ライバルにはなりえないため。)
あまり技術的なことは答えが返ってこないこともありますが、知識の限りの説明は答えてくれます。英語力はある程度あったほうが見学していて面白いと思います。

なお中は撮影禁止なので写真はほとんどありません。

R22とR44が並んで製造されていますが、ラインの長さが明らかにR44の方が長いです。R22とR44だと実用性はまったく次元が違うので、訓練機としてでなければR44の方が人気があるのは当然でしょう。R44は1機約5000万円なのでほかのタービン機に比べてかなり安いです。

また、ロビンソンの特徴は内製率がものすごく高いことです。全部品の85%は内製だそうですが、エンジン(ライカミング製)以外はほとんど内製でしょう。アルミの棒とかインゴット、スチールの板とかがおいてあり、「これを原料に加工します」と無造作に説明されていました。 もちろんハイドリックシステムも内製です。クリーンルームで製造されていました。

この内製率の高さの理由についても聞いてみましたが、「わからない」といわれました。これは経営哲学の問題なので一介の社員に聞くのも無理があったかもしれません。
また、この会社の特徴として、研究部門が小さいことが挙げられるでしょう。設計部?はたしかに非常に少なく、説明でも従業員の95%は製造ラインで働いているとのことでした。

なお、製造工程はライン化されていますが、自動車のような完全なラインにはなっていません。ロボットはまったくありませんでした。NC旋盤やマシニングセンタ、プレス機などが並んでいて部品を作り、その隣のラインで検査、そのさらに隣で組み付けといった感じの配置です。ちなみに工作機械は日本製が非常に多かったです。

ブレードの製作に関しては非常に気を使っていました。ヘリの生命線ですから当然ではありますが、大変そうでした。ちなみにメインローターブレードの後ろ3/4はアルミハニカムのサンドイッチ構造です。そのハニカムの引き伸ばす前のものが説明用においてありました。アルミの塊みたいな感じですが、引き伸ばすと蜂の巣みたいに伸びる状態です。

梱包も面白かったです。キャビンを45度上を向いた形にして木製の小さいコンテナに格納し、そしてローターとテールローターも木製の細長いコンテナに格納されていました。出荷先がリストにしてありましたが、本当に世界中に出荷しています。出荷待ちの20台くらいのうちの1台は日本向けでした。

ただしバラバラの状態で出荷すると組み立て後の検査工程が大変なので、アメリカ国内なら飛んで帰る人が多いそうです。わかる話ではありますが、トーランスはカリフォルニアでありアメリカ西の端にあるため、東海岸なら相当時間がかかるような気がします。R22の巡航速度はたった80ktなので、確実に数日かかるでしょう。ぜひ一度やってみたいですが、相当疲れると思います。

また内製ですから、検査工程が非常に多いです。作っては測り、組みつけては測り、完成したら測りといった感じですね。航空機ですから当たり前のことではあります。

全体として製造工程でのサプライズはなかったです。大体予想通りであり、手作業が多いことと、検査の工程のコスト、FAAの認証のコストなどを考えると、R22の価格(23万ドル)は納得できると感じました。
今の10倍多く売れたら、部品の内製率を下げて完全にライン化してしまえばかなりコストは下がると思いましたが、難しいでしょうね。

最後に例のシコルスキーのエンジニアが「R66のラインはあるのか?」とか微妙な質問を飛ばしていました。たまたまスーパーバイザーなる人が通りがかったため質問に答えてもらっていましたが、量産体制に入っていないのでラインはないらしい。ただテストはしていてもう実際に飛んでいるそうです。

その他には「何でR22とR44のテールローターの回転方向が違うの?」と質問していましたが、「そんなことはわからない」と一蹴されていました。まあガイドさんはエンジニアではないのでムリもないと思います。しかし私もぜひ知りたい。かならずなにか理由があるはずです。


ついでにメインテナンスマニュアルとパーツリストを買ってきました。両方で185ドルで結構高いですが、構造の勉強には最高の資料ですね。値段なりの価値はあるのではないでしょうか。ただし、日本の代理店を通すとおそらくとんでもない値段になると思うので、その場合は微妙ですね。なおこのマニュアルとリストは大きくて邪魔です。A4より一回り以上大きく、片方だけで厚さが5cmくらいあります。渡されたときに目を疑いました。
構造の勉強に役に立ちますが、マニュアルをみてびっくりしたような構造の部分はなかったです。おおむね想像どおりです。テールコーンの中のベアリングの支持も本当にステーのフリクションで振動を吸収する単純な構造でした。聞いていたとおりです。

【出荷前の機体】
R22_RHC_factorytourt.jpg
工場内で唯一撮影を許可された場所です。これからテストフライトをする機体が並んでいます。

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