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ヘリ訓練28.29回目 VRS回復、オートロ(R44 Clipper2) [ヘリコプター]

週末は連続でフライト訓練しました。機体の都合でR44の水上機(固定フロート)です。別に機体は何でもよいのですが、R22から乗り換えるといつものハイドロ付きのグニャグニャ・サイクリックで、最初の5分間は違和感があります。しかしすぐ慣れて気にならなくなります。左ハンドル車の乗った時みたいな感じです。

ということですが、以前からやりたかったVuichard Recoveryを試しました。
これが何かは、以下の動画をご覧ください。

「Vuichard Recovery Technique - How to escape a Vortex Ring State」
https://www.youtube.com/watch?v=HjeRSDsy-nE



この動画は、ヘリ関連の動画のなかでもっとも好きです。映画みたいに壮大です。

機体はラマで高高度性能を追求した伝説の機体です。ヘリの高度記録はこの機体が保持しています。
パイロットはClaudeVuichard本人です。

序文で、自分のPrivateのFAA試験官だったTimTuckerのことが出てきます。どこかのコラムでティムに紹介したときに最初は信じてもらえなかったらしいが、その後は積極的に広めてもらった、ということが書いてありました。




VRSとは、Vortex Ring Stateの略であり、いわゆるセトリングウィズパワーと同じものと認識しています。ヘリパイ用語では、「セトリング」です。自分としてはVRSといいたいところですが、日本ではセトリングのほうが一般的と思われます。

垂直降下したときに、自分自身の吹きおろしに入ってしまい、パワーをつかっているのにどんどん落ちるという恐怖の減少です。

英語ですが、これがとても良くまとまっています。
https://www.youtube.com/watch?v=Y87SIuCDtSc


ちなみに、VRSは理論的に誘導速度が遅いほど入りやすくなります。そして誘導速度はディスクローディングに比例するため、もっともディスクローディングの小さい部類のR22は入りやすいはずです。
VRSの予防には、ETL(Effective Translational Lift)以下に減速するときに、大体500fps以下にするようにするとなっています。
ちなみにETL以下に減速した場合は、正常でも振動がきます。VRSでも振動がくるのですが、その振動と正常なそれを区別するのは難しいと想定されます。

VRSからのリカバリーは、要するにパワーを抜き、渦から脱出するということになります。
1.コレクティブダウン(あるいはオートロ)
2.前か横に動かす

ということになります。
前に逃げるのがコンベンショナルリカバリーで、横(ロビンソンでは右)に逃げるのがVuichardリカバリー(ヴィシャードと発音するよう)です。



まずは訓練空域を予約しました。その後20分かけて出かけていきました。TCAにコンタクトしましたが、誰もいないせいかスコークの割り振りもなく自由に飛びました。
TCAのモニター下だと安心できます。黙ってTCAにコンタクトせずに飛ぶ機体もあるとおもいますが、すくなくともレーダーではみてくれていると思われます。

ということで4000ftまで上昇してVRSに入れます。ホバリングにするのですが、このような高高度ではホバリング自体が難しいです。どっちに動いているのかよくわからず、さらに冬の放射冷却の関係で逆転層ができており視程がかなり悪い。その影響で海の上でもあり向きの保持が非常にやりにくい。

ひとまずホバリングを確立してちょっと落とすとVRSの兆候の振動がきますので、リカバリーをします。

まずコレクティブを下げて前に進めます。だんだん加速すると、それとともに振動が消えます。昔々にやった記憶がよみがえってきます。
本物のVRSに入った場合は、回復に数千ftかかることがあるとのことで怖い限りですが、完全にVRSに入っているわけではないのですぐ回復できます。
何回かコンベンショナルなリカバリーをやったあとにVuichardリカバリーをやりました。

これは、ローター左回転(上からみて、ロビンソンをはじめとしてアメリカはこちら)のヘリでは、テールローターの風は左に噴き出しています。
このテールローターの推力を利用して、右に一気に機体を動かすリカバリーがこれです。さらに、右に一気に動かすために、右サイクリックと同時に左ペダル(クロスコントロール)を当てます。機体の向きを保持したまま右に平行移動する感じのようです。

なお、サイクリックもラダーも結構大きくあてる必要があります。じわじわやっていたらVortexの外にでられないため、スムーズかつ大きく動かす必要があるようです。
ラダーもかなりガツンと蹴る必要があります。大きくサイクリックを当てると向きが一気に乱れる感じなので、それを踏みとどまるという印象です。まあ、左ペダルを踏みこむとテールローターの推力も大きくなりますので、その意味もあるでしょう。

正しくできているのかどうかはよくわかりませんが、たしかにVuichardリカバリーのほうがすぐ元の状態に戻れる感じがしました。


緊張しながらひとしきり練習し、さらにオートロのエントリーをやりまくりました。なぜか、自分はここは得意です。以前からエントリーには苦労しませんでした。オートロが好きだからかもしれませんが、オートロ降下はすぐ安定します。

1時間半飛んで疲れ果てて帰りました。ホバーオートの練習もするつもりでしたが、その元気もなく帰りました。暑かったです。



翌日もフライトしましたが、今度はトラフィックパターン内のみで飛びました。ノーマルアプローチとオートロ*4回をやりました。

そしてオートロですが、あまり納得いく出来ではなかったです。それでも、だんだんマシになってきているのはわかります。PRMとトリムだけは結構まともに維持できていました。
オートロは速度(=姿勢)、RPM、トリムの全てを管理する必要があり、非常に忙しいです。重量もまあまあ重かったためRPMはじりじり上がりますし、フレアでもRPMは上がります。
忙しいですが、ヘリの訓練というのはいかに各操作を自動化するかというものであり、一つ一つやっていくしかありません。それでも少しずつですが前に進んでいると思いたいです。


その後はホバリングエプロンでホバーオートロをやりました。この科目は大嫌いですが、それでも何回かやってだいぶマシになりました。
いまさらながら、水平を保つことが極めて大切という当たり前のことが実感できました。水平さえ維持できれば、あとはなんとでもなるような印象も受けました。




ちなみにホーム空港は初期訓練に最適です。ホバリング練習も心置きなくできるし、空港なので広くてやりやすいです。定期便も来ませんしね。

なぜか、本日は機体が多くて忙しかったです。取り付け誘導路で待機している防災のBK117の目の前を自分のR44がオートロ降下し、後ろではセスナ172が滑走路に入ろうとしている(Line-up and wait)という感じでした。そして4機目のモーターグライダーがタクシーアウトするという感じでした。ギャラリーもいっぱいいましたが、見ごたえあったかもしれません。

ATC練習にもなります。フライトサービスですが、やっていることは全くタワー空港と同じなので、タワーに行っても大体問題なく話せるようになりました。(大体です。とくに困らない程度です。)


まあ、いろいろ課題はありますが、マシになってきたという一点のみで満足です。
今回もフライトをGoproで録画しましたが、すぐに電池切れになったので給電撮影にしないといけないのかもしれません。





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