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ロビンソンR44 クラッチ構造解説(R22も同じ) [ヘリコプター]

ヘリ訓練のかたわら、R22/R44の構造の勉強をたゆまず継続しています。
このたびクラッチの構造を勉強しましたが、ちょうど整備中のR44があり
クラッチが丸見えだったので撮影してきました。

ということでクラッチアクチュエーターについて解説してみます。
こちら。
clutch1.JPG

まず、「クラッチ」というとバイクのような油浸の湿式多板クラッチや、MT車の乾式単板クラッチ、あるいは刈り払い機の遠心クラッチなどいろいろなものが想像されると思います。いずれも摩擦材が徐々に締結することにより動力を伝えるような構造です。つまり、「滑らかに滑る」ことが可能なことがクラッチの本質です。
この意味ではR22、R44のクラッチというのはまさにクラッチですが、滑っているのはベルトで、その相手はプーリー(シーブ)です。本来滑ってはいけないものが滑っている感じで、無理やり感は否めません。

まあ、非常に軽量かつ信頼性の高い機構になっていると思います。なお、R22とR44は機構としてはほぼ同じであるため、写真はR44ですが区別せずに説明を行います。



まず、ドライブシャフト(プロペラシャフト?) が前後に走っており、エンジンからメインローターギアボックスとテールにパワーを分配しています。

そして、エンジン直結のロワーシーブからアッパーシーブに動力を伝達するのが問題のベルトです。
そして、ドライブシャフト(=アッパーシーブ)を下げることによりベルトを滑らせ、動力をカットしています。

ということで、その動かすアクチュエーターの構造や制御がクラッチの制御そのものとなります。そして、上記の写真がアクチュエーターそのものです。



まず上部からですが、電動モーターでウォームギアを回してアクチュエーター自体を伸縮させます。ウォームギアは非可逆性があるためちょうどよいのでしょう。そして、左右にずれないように固定するステーがついています。
なお、クラッチ作動中に無線にノイズが入る機体は結構あります。

clutch2.jPG


そして、これが各種スイッチ類です。クラッチはゆるんだら相当ヤバイことになります。逆に張りすぎてベルトが切れても大問題です。これらの両方を防ぐために各種のバックアップがついています。
クラッチ自体が伸縮するようになっており、これがまずポイントです。
clutch3.jPG


各スイッチの名称はこうなっています。
プレゼンテーション1.png


ダウンリミットスイッチは単純です。
ダウン(ドライブシャフトが下がる)ということはクラッチ断ということですが、上部が下がってくるとこのスイッチがON(OFFかもしれませんが、本質ではない)になってアクチュエーターが止まります。ボルトで調整できるようになっています。これは安全装置ではないでしょう。


アッパーリミットスイッチの構造はよくできています。板バネが左右にあり、下側は固定されています。上側はフリーになっています。
クラッチが伸びてベルトが張ってくると、反力がこの板バネのところにかかるようになります。そうするとこのバネが外側に張り出す(曲がる)ようになります。おそらくどちらかでクラッチが止まるようになっていると思いますが、フェイルセーフで両側にスイッチがあります。
そして、これのよくできているところは反力を検知しているため、飛行中に温度が上がるなどでベルトが伸びると反力が減り、またバネがまっすぐになってこのスイッチが切れるわけです。そうすると再度アクチュエーターが伸びて、反力がまた出たら止まります。
飛行の最初の方やオートロ中などによくこのようになります。10秒以内ならOKとなっているので、ライトがついたら長さをカウントすることになります。


オーバーリミットスイッチは安全装置です。ワイヤーがついていて、伸び切るとアクチュエーターが切れます。伸ばしすぎでベルトが切れるのを防ぐためでしょう。




ロビンソンはシャフト自体を上下させていますが、シュワイザー300Cはパワートレインの配置は同様であるものの、このベルトのアイドラプーリーを動かすという素直な構造になっています。
ロビンソンはなるべく軽量にするということでこのような構造にしたのだろうと思いますが、クラッチの構造は結構トリッキーという気はします。

最初はベルト4本で発売されたらしいですが、ベルトが外れまくったりしたそうで、いつのまにかベルト2本(ただし溝は2つ)になったそうです。

まあ、ロビンソンに乗るならクラッチの構造は知っておく必要があるとおもいましたので、解説してみました。参考になれば幸いです。
なお、今回の写真はR44ですが、R22もほとんど同じです。


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